模倣品急増で揺れる化粧品市場 | 税関の差止数は過去最高で約1.7倍、国民生活センターの相談数は約4倍

模倣品急増で揺れる化粧品市場 | 税関の差止数は過去最高で約1.7倍、国民生活センターの相談数は約4倍

東京税関の発表では、2023年度の模倣品の差止件数が、過去最多の216,387点となり、2011年以降過去最多点数となり、2022年度の同月に比べ178.5%上昇していることが明らかとなった。また、国民生活センターの偽化粧品の相談件数は約4倍と急増し、模倣品問題は喫緊の課題となっている。

コラムの内容

日本の化粧品が中国で人気が出る

近年、日本の化粧品が中国で爆発的な人気を集めている。背景には、日本製品に対する「高品質」「安全」という信頼感がある。特に資生堂やSK-IIなどのブランドは、中国の中産階級や若年層の間でステータスシンボルとして定着。 2022年には対中輸出額が約4,000億円に達し、2019年比で60%増と急成長を遂げた。


この人気は、中国の巨大な消費者市場と、日本の化粧品業界にとって大きなチャンスをもたらしているが、同時に新たな問題の火種ともなっている。

円安などの背景もあり爆買いが起こる

円安の進行が、日本の化粧品の「爆買い」を加速させている。2023年、1ドル=150円台に突入した為替レートは、中国人にとって日本製品を割安にし、購買意欲を刺激した。 コロナ禍で減少していた訪日中国人観光客も回復し、2023年にはその数がコロナ前の7割に達した。


彼らがドラッグストアや免税店で大量に購入する姿は、再び日常風景となりつつある。特に化粧品は手頃な価格と高い品質から人気で、こうした爆買いが市場に大きな影響を与えている。

中国の不動産バブルが弾ける

一方で、中国経済は深刻な転換点を迎えている。2023年、不動産バブルが崩壊し、恒大集団の破綻を皮切りに市場が混乱。不動産価格の下落は多くの消費者の資産を直撃し、家計の経済的余裕を奪った。


国家統計局のデータでは、消費者信頼感指数が過去10年で最低を記録し、消費者の購買力が急速に低下している。この経済的危機は、奢侈品への支出を控える動きを加速させ、次に述べる新たな消費トレンドを生み出すきっかけとなった。

消費者が貧しくなりデュープが流行する

経済的困窮が続く中、中国の消費者行動に変化が現れた。高価な日本製化粧品の代わりに、「デュープ」と呼ばれる安価な代替品が注目を集めている。デュープは本物に似せた低価格商品で、特に化粧品市場で急成長。


Taobaoの2023年データでは、デュープ関連の検索が前年比200%増と急上昇し、「平替」文化が浸透している。消費者は品質よりも価格を優先せざるを得なくなり、このトレンドが模倣品の需要をさらに押し上げることとなった。

爆買いされた日本の製品の逆流とともに模倣品も増える

爆買いされた日本の化粧品が中国市場に逆流する中、模倣品の流通も急増している。日本で購入された正規品がWeChatや拼多多を通じて転売される一方で、これに便乗する形で偽物が市場に溢れ始めた。


中国の高度な製造インフラと「山寨」文化が、この動きを加速。本物の資生堂やコーセーを模倣した製品が、低価格で大量に出回るようになった。こうした偽物は見た目やパッケージが本物そっくりで、消費者が見分けるのは困難だ。

検挙数が例年比で1.7倍で偽物化粧品は4倍

この状況を受け、日本の当局が動きを強めている。警察庁の2023年データでは、知的財産権侵害の検挙件数が前年比1.7倍に跳ね上がり、特に偽化粧品の摘発は4倍に達した。税関の押収数も前年の5万点から20万点へと急増し、偽物の流入が深刻化していることがわかる。


これらの数字は、模倣品が単なる経済問題を超え、消費者の安全やブランドの信頼を脅かす危機であることを示している。早急な対策が求められる局面だ。

対策強化の必要性

偽化粧品の急増に対抗するため、日中両国での対策が急務だ。中国では「三合一」改革により、民事・刑事訴訟と税関の連携を強化し、模倣品の根絶を目指している。


一方、日本では税関と警察の協力に加え、消費者への啓発キャンペーンを展開。正規品の見分け方や偽物の危険性を伝える教育が進められている。さらに、企業側も偽造防止技術(例: QRコード認証)の導入を加速させるべきだ。こうした多角的な取り組みが、偽化粧品の氾濫を抑え、消費者の安全と信頼を守る鍵となるだろう。

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まとめ

日本の化粧品が中国で人気を博し、円安による爆買いが起こる一方で、中国の経済危機がデュープや模倣品の需要を高めた。逆流する正規品と偽物の混在が問題を複雑化させ、日本での検挙数が急増する事態に発展している。この危機を乗り越えるには、国際的な連携と技術革新、そして消費者教育が不可欠だ。